雷と雷雲

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長野市は千曲川、犀川の大きな河川をもった盆地であり雷雲の発生には適した条件を備えている。また、雷雲の移動の方向性もこの2本の河川が大きな影響をあたえている。

 雷雲は、入道雲・かなとこ雲などと呼ばれる積乱雲である。長野市で雷鳴を伴なう雷雲が観測されるのは6月、7月、8月の3か月間に集中している。


写真5-30 空を走る稲妻
(雲間放電-飯綱高原にて)

 長野市は、周囲を山に囲まれた盆地という地理的条件から、高気圧におおわれた夏の日中は、30℃を超えるたいへんな暑さになる。このように高温になった空気は、山の斜面に沿って上昇を始める。この上昇気流の上空に冷たい空気が流れこんでくると、大気の状態はさらに不安定となり、毎秒十数mの速さの激しい上昇気流となる。この上昇気流は、ときには高度1万mにも達する雄大積雲をつくるが、地上で暖められた空気はここで一挙に数十℃冷やされ大量の水分を雲の中に放出し雲粒ができる。これらの雲粒は衝突したり既にできている雲粒に吸収されたりしてひょうやあられが形成される。これらの氷の粒が成長し、上昇気流の力では支え切れなくなると落下を開始する。雲のなかでは秒速十数mの速さで落下していく。この落下の途中で大気の暖かさで解かされ、大きな雨粒になる。

 このひょうやあられが雲の中で上昇したり下降したりして衝突を繰りかえすと、正と負の電荷が発生し雷雲として発達していく。

 雷雲の雲底は直径4~5kmと狭く、激しい上昇気流も数十分から1時間と寿命も短い。寒冷前線といっしょになって発生する雷雲も、それぞれの寿命は短くて数時間ほどであるが、つぎつぎと新たな雷雲を数十kmほどの範囲内で発生させるので、何時間も雷鳴を響かせ雨を降らせる。このような性質の雷雲は気象条件が変わらないあいだは発生しやすく「雷3日」といわれる。

 雷雲は、その性質から落雷や局地的で激しい雨やひょうを短時間に多量に降らせ、毎年農作物への被害が報告されている。