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2月20日ごろから6月10日ごろ。春の訪れは、まず西高東低の冬型の気圧配置がくずれ、移動性高気圧と低気圧が交互にやってくるようになることから始まる。天気は周期的に変化するようになるが、この傾向は5月上旬ごろまでつづく。日ざしはしだいに濃くなり、凍結していた地表面もやわらいでくる。長野地方気象台の統計では、日平均気温が0℃より低いのは1月の初めから2月20日ごろまでである。日最低気温が0℃以下の日は3月25日ごろまでつづくが、日最高気温は3月下旬からは10℃以上となり、山間地でも雪解けが進む。

 低気圧が日本海に入って発達すると、太平洋側の暖気が入りこみ、強い南風が吹いて気温が上昇し空気が乾燥する、いわゆるフェーン現象が起こることがある。また、寒冷前線が通過するさい、強風が吹いて砂塵(さじん)が起こり空が濁ることがある。千曲川河川敷の長芋畑などの表面が乾燥していると、砂塵嵐が起こったりする。春先の強風のときの火災は大火になりやすい。


写真5-34 春の強風による砂じん(松代道島にて)

 移動性高気圧がやってくると、日中の気温は上昇するが夜間も放射冷却によって低温となり、降霜のおそれが出てくる。遅霜への警戒は5月中旬まで残る。

 植物の生育上重要な目安とされる日平均気温5℃には、平坦(へいたん)地では3月下旬の後半には達しているが、安定してくるのは4月上旬となり、山間地は高度とともに遅くなる。長野市におけるサクラのソメイヨシノの平年値は、開花が4月15日、満開は21日であるが、月末へかけて等高線に沿うように上がっていく景観が見られる。

 5月は移動性高気圧におおわれることが多く、日照時間も222.9時間(長野地方気象台資料)と8月と並んで多く、日平均気温の月平均も15℃前後となって安定した天気がつづく。標高の高いところでは晩霜の危険や寒冷前線にともなうひょう(雹)害の心配が残る。