長野県は豊かな自然に恵まれているが、いっぽう気象災害も多く、毎年のように大雨や大雪、降ひょう(雹)、晩霜などによる被害が発生している。
台風や前線、低気圧などによる大雨は河川の氾濫(はんらん)をはじめ土砂崩壊、土石流、地すべりなどによる大雨災害が発生しやすく、農業や土木施設などに大きな被害をおよぼし、ときには人的被害さえも発生する。
冬期間、北部県境地方の大雪は、交通障害やなだれを発生させ、さらに融雪洪水や地すべりの原因となるなど、社会活動や日常生活にも大きな影響をあたえる。
高冷地では、低地に比べて気温が低く春が遅くきて秋が早いため、農作物の生育期間が短い。したがって低温による災害を受けやすく、とくにイネは被害を受ける度合いが大きい。
また盆地では、盆地の気象の特性として降ひょうや遅霜(おそじも)による被害を受けるが、被害の範囲は限定される場合が多い。それに比べて、低温や長雨による冷害、小雨や日照りつづきによる干害などは、もっと広い範囲におよぶ。
長野県北部地域、いわゆる北信地方に発生した気象災害件数を災害別に図にしたものが図5-70である。これによると、大雨による災害がもっとも多くて全体の35%ほどになり、つぎに大雪やひょうによる災害となっている。
県下を東、中、南、北信の4地域に分けて件数をみると、大雪の災害は北信や中信に多く、ひょうによるものは東信地方に多くみられるなど、地方による気象の特性の違いがよくあらわれる。
長野県内の気象災害を気象要因別にしたものが表5-25である。災害には一つの要因によるものもあるし、いくつかの要因が複合して発生する場合もある。大雨による災害の要因では、雷雨によるものがもっとも多く、ついで台風、梅雨前線、低気圧の順になっているが、これは長野県の特徴ともいえる。北信地方の月別の災害件数をみると、7~9月の暖候期に多く、最大は7月である。寒候期は全般に少ないが、最小は11月である。