9月5日グアム島付近に発生した熱帯低気圧は6日台風18号となり、発達して強い大型の台風となり12日御前崎付近に上陸した(中心気圧968hPa、最大風速35m/s)。
上陸後はしだいに衰えながら加速して関東地方西部を通り、温帯低気圧となって北海道を縦断してオホーツク海に去った。
台風の上陸直前まで本州の南岸に停滞していた前線は刺激を受けて活発化し、10日夜半からは本格的な降雨となった。
長野市付近では1時間に1mm前後の強さで降りつづいていたが、11日21時ごろからは1時間3~5mmの強さで降りはじめ、この強い雨は翌12日9時ごろまでつづいた。気象台では11日23時40分に大雨・洪水警報を発表、12日13時には暴風雨・洪水警報に切りかえた。長野市では15時ごろから再び雨勢が強まり、台風が18時ごろ御前崎に上陸後北東に進み長野にもっとも近づいて、関東地方西部を通った22時ごろまでは1時間10mmを超す強い雨がつづいた。
この台風による市内の雨量分布は図5-73のようである。北部の浅川・若槻地区は80mm以下と少なく、茶臼山を中心とした地域は、140mm前後となり、もっとも多いのは東部山地で、菅平方面では140mmを超えた。また、犀川沿いでも150mmを超えた。長野地方気象台では10日5mm、11日26mm、12日114mmで合計145mmとなったが、12日の日降水量114.5mmは気象台が観測を開始した1889年以来の記録99.5mmを更新して第1位となった。
この台風による風は、長野地方気象台の記録によると、最大風速が東北東の風10.0m/s(10分間平均)で12日18時20分に、最大瞬間風速は北東の風20.6m/sで12日17時30分となっている。
出水状況をみると、今回の雨は台風の雨と秋雨前線の雨が重なったため、平野部および山間部で平均した大雨となった。各河川は12日明け方から急激に増水し、千曲川立ケ花観測所では12時に警戒水位を突破し、さらに水位の上昇が激しくなり13日5時には10.54mを記録したが、これをピークに徐々に下降しはじめた。
被害の状況をみると、台風18号は多量の降雨のため大出水となり、千曲川や中小河川が各所で護岸が決壊または破堤寸前の危険な状態となった。とくに千曲川の本流は警戒水位をはるかに超え、支流の中小河川は逆流を防ぐため水門を閉鎖した。松代地区では蛭川水門の閉鎖により蛭川、藤沢川、神田川などが各所で溢水(いっすい)したため松代温泉団地では大溢水により大半の家屋が床上浸水した。また若穂の赤野田川、信更の聖川の堤防破壊、篠ノ井、更北、柳原地区などで中小河川の溢水により家屋は浸水した。農作物では千曲川の増水や市内中小河川の溢水により長時間冠水したため、堤外地では果樹をはじめ長芋、桑、野菜などは壊滅的な被害となった。道路や河川など公共土木関係、農林関係の被害は莫大となり、また強風により大木が倒れ人身被害もあった。