長野盆地の降水量は少なく、日本の代表的な少雨地帯である。しかし、砂漠になるほどでもないから、植物の生育と分布は、気温に左右されて広域的には気候帯によって大別される。
南北に長い日本列島は、西南日本のように年中緑の草木が生いしげる常緑樹林帯(じょうりょくじゅりんたい)(暖温帯(だんおんたい)で照葉(しょうよう)樹林帯ともいう)と、中部から北へ、冬季に葉を落とす落葉(らくよう)樹林帯(冷温帯(れいおんたい)で最近は夏緑(かりょく)樹林帯という)に大きく二分される。一部、北海道東部には亜寒帯(あかんたい)の針葉(しんよう)樹林があり、本州では、標高1,600~1,700m以上の亜高山帯がこれに相当し、高山帯へとつづいている。
長野県内の常緑(照葉)樹林帯は、南部の天竜川や木曽川沿いに狭く分布しているだけで、他の地域は、四季の季節がはっきりしている夏緑(落葉)樹林帯に広く含まれる。
夏緑樹林帯の代表的な自然植生はブナ林であり、冷温帯の気候的な極相林(きょくそうりん)である。ブナ林は究極の森ともいわれ、中立でもっとも豊かな土地を広く占めている。それに対し、湿りすぎたり、乾きやすい土地にはブナ林はできず、かわってケヤキやサワグルミ、ハルニレ、ハンノキ、ヤナギ類等々の広葉(こうよう)樹林とヒノキやクロベ、ウラジロモミ、ツガ、アカマツなどの針葉樹林が土地的な極相林となって生育している。