(3) クリ帯とブナ帯

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 夏緑樹林帯は、垂直分布では山地帯または低山帯に相当する。山地帯は二つに分かれ、これまでの呼び方を生かして山地帯上部がブナ帯、問題の山地帯下部をクリ帯とするのがわかりやすい。

 このクリ帯は、大勢の人びとが古くから住みついて文化をおこし、生活の場であった。雨量が少なく、気温較差(かくさ)の激しい内陸気候の自然条件と重なって、自然植生はすっかり代償植生だけとなり、原生林が残されていないために起こった論争である。

 はたして、気候的な極相林は何なのか。そして、土地的な極相林とはどんな樹林なのか。郷土の植生が少しずつ解明されるとブナ林の存在がますます重視され、これまで雑木林だと片づけてきたケヤキやコナラ、クヌギ、クリ等々の夏緑樹も主役に近づき、山麓(さんろく)をわがもの顔でおおうアカマツ林の位置づけもだんだんと明らかになってきた。


写真6-22 うら山に広がるコナラなどの雑木林


写真6-24 長野盆地でもっとも大木となるケヤキ


写真6-25 ケヤキは社寺林や屋敷林のほか盆地の周囲にも多い


写真6-26 やせ地にすみつくアカマツ林