(3) シダ植物には雑種が多い

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 日本には約190種類以上の雑種が認められ、県内では約35種類が知られている(大塚,1987)。長野市内にはつぎの5種類が見つかっており、今後もいくつか発見されると考えられる。動物では雑種ができても、ふつうそれ一代で終わるが、植物では栄養繁殖するので、雑種は植物相を構成する一員となる。雑種は両親の形質を合せもち、中間的な形態をしている。また、胞子を顕微鏡で観察すると大きさや形が一定しないか、熟さないことから雑種と識別できる。


表6-1 長野市内に自生する雑種

 雑種は両親から成長した前葉体が接近して存在し、いっぽうの前葉体上の造精器から出た精子が他方の前葉体上の造卵器へ泳ぎつき、受精がおこることにより形成される。このタイミングはごくまれなことと思われるが、野外では意外と雑種が多い。

 フジオシダは、よく探すと各地で見つけることができる。また、富士ノ塔山ではサカゲイノデ、ツヤナシイノデ、イワシロイノデが豊富にあり、それらの雑種であるアイツヤナシイノデとサカゲイワシロイノデがさまざまな形態で自生するため、それぞれの識別は非常にむずかしい。


写真6-29 フジオシダ(オシダとオクマワラビの雑種)

 イノデの類とオシダは形や葉柄の毛や鱗片(りんぺん)が多いこともたいへんよく似ているが、葉の形が異なる。葉の最小単位である裂片を見ると、イノデは裂片が軸から独立するのに対し、オシダでは軸に流れており、独立しないので区別は容易である。


図6-7 オシダとイノデ類の葉(裂片)の形