(3) 暖温帯性のシダ

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 長野県は冷涼な気候であるため、県内に分布するシダは冷温帯~亜寒帯性の種類が主である。暖温帯性の種類は、下伊那南部や木曽南部に出現するが、海抜の低い地帯の姫川流域や千曲川流域にもまれに自生している。

 長野市近辺には、いくつかの暖温帯性のシダが見られる。県内の他の内陸部と比較しても、暖温帯性のシダが多い地域である。なかでも旭山から富士ノ塔山を中心として何種類か分布している。安茂里(あもり)の犀川神社裏山には、ベニシダが何株も生えている。ベニシダは、胞子のうを保護している包膜の中心が若いときに赤色をしている。また、出始めの若い葉が赤色で美しく、関西などの庭園では必ずこのシダが見られる。ほかにこの山域にはイノデとイノデモドキがある。イノデは木曽と伊那谷のほかは県内ではここでしか見つかっていない。その他、アイアスカイノデ、シケチシダ、イワヒメワラビなどがある。


写真6-35 ベニシダ


図6-8 ベニシダの分布


写真6-36 イノデモドキ


写真6-37 アイアスカイノデ


図6-9 イノデの分布