最近、春になると黄色い絨毯(じゅうたん)で埋めつくされたような、千曲川の河原を目にするようになった。菜の花かと見まちがわれるが、これが近年、河原を中心に急速に分布を広げてきたハルザキヤマガラシ(春咲き山芥子、アブラナ科)である。ヨーロッパ原産の帰化植物で、明治末ごろ日本に渡来し、1950年代中ごろから分布を広げだしたという。
関崎橋付近の農家の話では、10年ほど前(1985年ごろ)から広がってきたという。したがって、長野市ではごく最近のことである。1987年(昭和62)に関崎橋付近の堤防工事がおこなわれているが、それより以前から分布していたということなので、この工事がきっかけで入ってきたわけではないらしい。
落合橋付近で、ハルザキヤマガラシの分布を見るとおもしろいことがわかる。千曲川の分布に比べれば、犀川にはほとんど分布していない。そこで、それぞれの河川の広い範囲を調査してみると、やはり犀川全域には少なく、千曲川では上流の南佐久郡川上村から下流の下水内郡栄村まで全域にわたって分布している。
河原以外では、霧ヶ峰高原や他の牧場などにも多く見られることから、ハルザキヤマガラシの分布の特徴は、千曲川上流の高原野菜の栽培地から広がってきたのではないかと考えられる(358ページ参照)。
過酷な河川環境のなかで、今後どのように増減していくのであろうか。