(4) 河原に多いヤナギのなかま

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 河原に生える樹木といえば、まずヤナギの木を思い浮かべる。そしてヤナギといえば、ネコヤナギが有名である。ヤナギのなかまは雌雄異株であり、雄と雌の花がつく木がそれぞれ別になっている。春の訪れを感じさせる白銀色のふっくらとした花は、花弁とがく(萼)が退化してなくなっているため、雄しべと雌しべだけの集まりである。したがって、花を見てヤナギの種類を区別することはなかなかむずかしい。ヤナギを見るとどれもネコヤナギかと思うが、千曲川の沿岸ではネコヤナギは少ない。

 千曲川でよく見かけるヤナギは、イヌコリヤナギ(低木)、タチヤナギ(低~小高木)、カワヤナギ(低~小高木)、コゴメヤナギ(高木)である。

 イヌコリヤナギは、他のヤナギと違い、葉が対生(一つの節から2枚向かいあって出る)することから、区別しやすいヤナギである。高さ2~3mぐらいのこんもりとしたヤナギは、イヌコリヤナギであることが多い。


写真6-58 対生するイヌコリヤナギ

 タチヤナギは、3個の雄しべをもつ。他は1~2個だから、このヤナギだけは花を見てすぐにわかる。屋島橋付近では、堤防側の増水時に水路となる低地のまわりで、10mほどに成長したタチヤナギが見られる。本流に近い礫(れき)混じりの砂地では、大人の身長ほどの、発芽してまだ2~3年生のタチヤナギの群落が見られる。これらは洪水の影響を直接受ける場所にあるため、生き残るものはほとんどないが、なかまを増やす種子散布には大きな役割をはたしている。


写真6-59 3個の雄しべをもつタチヤナギ

 カワヤナギは、ネコヤナギの別名として使われることもある。しかし、ネコヤナギとは違う植物であり、牧野植物図鑑でいうナガバカワヤナギのことである。タチヤナギと同じような場所に生えるが、タチヤナギよりもさらに水辺に近いところに見られ、水際にせり出して生えているヤナギはカワヤナギが多い。

 コゴメヤナギは、「柳町通り」など街角に植えられているシダレヤナギに近い種類で、枝は垂れずに20mを超える高木に成長する。したがって、本流に近い河原にはこの低木が見られるが、高木にまで成長できるものは、増水しても影響を受けにくい安定した場所に発芽したものだろう。コゴメヤナギは高木になるので他のヤナギに比べ折れやすい特色があるが、折れた幹から根を出して、再生するという驚くべき生命力をみせてくれる。


写真6-60 倒れた幹から根を出すコゴメヤナギ

 なぜ河原にヤナギが多いのか。その特徴をあらためてみてみると、以下の点が挙げられる。

 ・ヤナギの材はしなやかで折れにくい。

 ・折れた先からも発根し、再生する。

 ・発芽率が非常に高い。

 ・成長速度が非常に速い。

 これらのことから、毎年河川の洪水により裸地化される河原へ進入しやすく、しかも定着しやすいことがうかがえる。