(2) 枯れ葉が目立つヤマコウバシ

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 ヤマコウバシ(山香ばし、クスノキ科)は、関東以西に生えて四国、九州から朝鮮や中国大陸に分布する。雑木林の春一番に、チシャとかヂシャ花と呼ぶ黄色の花がある。このアブラチャンやダンコウバイと同じなかまで、枝を折ると芳香のある夏緑低木である。山で香(こう)ばしいと名づけられているが、地味な黄緑色の花をつけ、薬用などに使われるでもなく、あまり知られていない。


写真6-68 ヤマコウバシ

 ところが、秋に紅葉して枯れ葉になっても枝についたままで冬を越す。しかも、新しい葉が出る4月の中旬まで落葉しないから、はだか木が並ぶ冬枯れの雑木林ではよく目立つ。

 したがって、ヤマコウバシがどこにあるかを調べるには冬のあいだがもっともよい。長野盆地周辺で確認された、ヤマコウバシの分布地を図で示す。北は飯山市との境まで。垂直的には千曲川河畔の320mから標高約700mのあいだで、600m以下に集中して生えている。


図6-12 長野盆地周辺のヤマコウバシの分布 (和田,1992)

 このヤマコウバシの分布地は、野生のカシもなければブナもない地域と一致して、移行帯である中間温帯の指標(しひょう)植物となる。