1950年(昭和25)ごろの帰化種の生育状態を、長野市に寄贈された峯村まさコレクションの標本から読みとり、最近の帰化種のようすと比較してみた。1950年代にはよく見られたが、最近はあまり見られなくなった種はウロコナズナ、グンバイナズナ、オオマツヨイグサなどがある。
逆に、1950年代にはあまり見られなかった帰化植物や、あってもわずかの生育量だった植物が、最近大きく分布を広げているのはヒメオドリコソウ、オオブタクサ、オニウシノケグサ、イヌムギ、オオアレチノギク、セイタカアワダチソウ、アレチウリ、ヨウシュヤマゴボウ、ハルザキヤマガラシなどである。
これらの種はいずれも繁殖力が強く、ハルザキヤマガラシの種子の数を数えてみると、一株から20~25本の茎を伸ばし、一本の茎から14~18の枝を分け、一つの枝に平均23の果実をつけていた。さらに、一つの果実のなかに平均7個の種子が入っているので、一株では約4万5,000個の種子をつけていることになる。これが河原を中心に毎年分布域を広げる原動力となっているのである。
約40年の時間の経過で、身近な空き地や路傍に広く繁殖する帰化植物は、種類、生育量ともに大きく変化している。帰化植物は人間が土地を攪乱(かくらん)し、いかに不安定な立地にしているかの指標植物として利用できる。そして、今後も注意深く、帰化植物の動きを見守る必要がある。