アカマツの生育範囲は広く、山地のなだらかな斜面や平地にも見られる。
また、人間が近づけない山腹の急斜面、岩が突きだした尾根筋の土壌が浅く、風の強い乾緑地にも見られる。
市内のアカマツ群落には、自然植生と代償植生の群落が点在していると考えられるが、明確な区別はむずかしい。
一般に自然植生のアカマツ群落は、山腹のやせた尾根筋で、他の樹木が生育しにくい立地に発達している。このような環境にも適応しているのは、種子に翼がついており、風によって散布されやすく、直射日光のあたる乾燥地でも発芽し、生育できるからである。
代償植生のアカマツ群落は、原生林が伐採や風水害、山火事などで破壊された跡に、自然に分布を広げて成立した森林(二次林)と、植栽されたあとに、放置されたものである。
市内のアカマツ群落の大部分は、代償植生と考えられる。
アカマツ群落の林床(りんしょう)(森林内の地表面)は、アカマツの樹冠(じゅかん)がまばらであることから、林床に日光がさしこむので、ヤマツツジ、ソヨゴ、コツクバネウツギ、ワラビなどの陽性植物(日光を好む植物)が多い。
林床には、松葉が一面に敷きつめられており、落葉広葉樹林と違った様相を示す。松葉は樹脂が多いため、バクテリアによって分解されにくく、糸状菌によって分解される。
松葉はやがて、白い菌糸が成長した粗い腐植層をつくる。そのため、雨水は土中に染みこみにくくなり、土壌は酸性、乾燥化する。
植栽後、定期的に下草刈りがおこなわれた森林は、アカマツがそろった群落になる。
このような群落では、ヤマウルシ、コナラ、リョウブ、ナツハゼ、ネジキ、ヤマハギ、ウリカエデ、アクシバなど、刈りとられても萌芽・再生力の強い植物が構成種となる。
ヤマウルシとヤマツツジは、アカマツ群落の特徴的な植物である。ほかに結びつきの強い植物に、ネジキ、ネズミサシ、コバノガマズミ、ヒカゲスゲなどがある。また、コナラ群落と植生帯が同じ位置なので、コナラ群落と共通する植物が多く出現する。