(7) ダケカンバ群落

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 ダケカンバは、針葉樹林のコメツガ林の上部に位置しているのが一般的であるが、飯縄山においては、ミズナラ群落の上部に発達している。コメツガ群落が、ダケカンバ群落のなかに点在しているからである。

 飯縄山のダケカンバ群落は、標高1,500~1,750mの範囲の亜高山帯に分布している。環境は連続した南-南東の斜面がつづき、緩やかなへこみのある沢筋で、雪崩(なだれ)や落石が発生しやすい場所である。

 ダケカンバは、積雪の重みに耐えられるように、幹が曲がった状態で生育している。樹高は、立地が安定しているところでは、10~15mほどある。ダケカンバが雪崩などの影響を受けて、まばらに生えていたり、上部の枝葉が少ないので群落内は明るい。


写真6-141 ダケカンバ群落(飯縄山)

 ダケカンバは、同じカバノキ科のシラカンバと比べて、身近なものではない。

 しかし、材は堅く、樹皮はきれいなので、彫刻、家具、合板の材料として利用されている。シラカンバと比較すると、区別点は表6-22のようにまとめられる。


表6-22 ダケカンバとシラカンバの比較

 ダケカンバ群落の構成種には、ダケカンバ、チシマザサ、オガラバナ、シラネワラビ、ツバメオモトなどがある。


表6-23 ダケカンバ群落

 隣接する群落は、多雪地帯に結びつきの強いミヤマカワラハンノキ、ヤハズハンノキ、の低木群落がある。

 飯縄山の一部のなだらかな斜面に発達するダケカンバ群落は、比較的土壌が厚く堆積しており、草本層の生育もよい。林床には、ウラジロナナカマド、ミネカエデ、ヤグルマソウ、ミヤマメシダ、モミジカラマツなどの湿潤地を好む植物が多い。


図6-21 ダケカンバ群落の断面模式図

 また、ダケカンバ群落が発達する付近には、針葉樹のシラビソの単木が散生しているが、群落を形成するまでには至らず、ダケカンバ群落に含めて扱いたい。

 標高1,900m付近の上限のダケカンバ群落は、樹高が5~6mの低いまばらな林で、林床は一面にシナノザサでおおわれている。