(1) 多雨地域のスギ林業

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 日本の特産種であるスギ(杉、スギ科)は、北は青森県から南は屋久島まで天然に分布する。裾花川の源流や戸隠の佐渡山にも天然スギがあるように、立山周辺を中心に日本海側に点々と残されている。太平洋側のものをヨシノスギ(吉野杉)またはオモテスギ(表杉)という。日本海側の多雪地のスギは、幹の下から枝分かれして地について発芽するなどが特徴で、変種のアシウスギ(芦生杉)とかウラスギ(裏杉)といって分けている。わが国でもっとも重要な林業樹種であり、吉野地方では400年も前から植林されたというし、現在では全植林面積の40%にも達して、真の自生地域はよくわからない。しかし、遺跡等から発掘されるなど、かつては全国に広く自生していたと考えられている。

 スギの植林は、年平均気温が12~14℃、年間雨量が3,000mm以上の気候が最適とされ、有名な林業地が各地に知られている。市内では若穂保科や松代町西条(にしじょう)・豊栄(とよさか)地区が早くからスギ植林を手がけてきた。市の人工林の半分はスギ林だが、降水量が少ないということはきわめてきびしい自然条件である。