(2) カラマツ林の動向

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 長野市の人工林のうち、3分の1はカラマツ林である。

 長野県に広く植林されているカラマツ(落葉松、唐松、マツ科)は、長野、山梨県を中心とした、主に本州中部の亜高山帯に野生する。産地の名をとって、富士松とか日光松ともいわれていた。山火事の跡地やがけ崩れなど、土壌が露出したところによく生える陽樹である。野生のカラマツを天然カラマツ、略して天カラと呼んで年数を経た材木は質がよく、小諸藩などの武家屋敷や民家の建築に使われ、松本城の基礎にも利用されている。

 植林のカラマツは、浅間山の南山麓(さんろく)の国有林に1852年(嘉永5)、小諸藩によって植栽された最古の人工林が残されている。浅間山や八ヶ岳周辺は、もともと天カラの多い地域であった。スギやヒノキは、すでに江戸時代に植林されていたがカラマツが一般に植えられたのは、200年も遅れて1879年(明治12)からである。成長が早いというので急速に広まり、その後20年間に北海道や韓国、ヨーロッパにまで植林されるようになった。それらの多くは県内産の種子や苗木で、信州カラマツの名で呼ばれている。

 飯縄山の国有地の植林も、明治のころからはじまった。当初は、木を切った跡地へ植えたものではなく、茅場(かやば)などの草地へ植林されたものだという。そして昭和30年代には、生産力増強という林業構造改善事業によって天然林を人工林へ、カラマツこそといっそうの植林が進められ今日にいたっている。


写真6-152 飯綱高原のカラマツ林