③ アサ(クワ科)

387 ~ 388

 中央アジア原産といわれ、雌雄異株の一年生植物。密植すると2~3mにもなり、昭和20年代まで長野市近隣でも麻畑は広がっていた。茎から強くて長い繊維がとれ、種子は食用にもなって、中国の五穀の一つであった。アサは繊維をとるために最初に栽培された植物で、すでに紀元前4,000年ごろから始まっている。日本へも早くに伝わり、万葉集には麻の歌が28首を数える。奈良時代には全国で栽培され、麻のつく地名が各地に残っている。

 じょうぶな麻布は、作業衣に適し庶民の衣類であった。やがて綿が普及すると暖かさではかなわなかったが、湿気の多い日本の夏にはべとつかない衣類として長く使用されてきた。武士の威厳を示すピンと張った裃(かみしも)は、多くは麻布から作られていた。

 アサには幻覚物質をふくむ品種があり、葉や未熟な果穂が大麻(たいま)(マリファナ)の原料となる。日本では現在、栽培が禁止されている。かつて栽培された品種は、麻酔性の弱いインドアサが主であった。


写真6-153 アサ(鬼無里村民俗資料館で)