(1) 砂地に伸びるナガイモづくり

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 千曲川は、更埴市を抜けると犀川扇状地によって東部山地側へ押し寄せられている。流れもゆるくなるので、曲がりくねるたびに上流から運んできた土砂を堆積(たいせき)し、自然堤防がつくられた。この幅が数百mから1km以上にもわたり、しかも肥えた砂泥が堆積しているので昔から豊かな農地として利用されてきた。

 『長野県町村誌』によると、すでに塩崎では1万500貫の長芋がとれ、その大半は他地域へ出荷していた。現在の主産地である松代は400年も前から自家用に栽培し、丹精こめた農家の手から手へと受け継がれて今日にいたっている。養蚕の衰退とともにいっそう拡大して、良質の長芋づくりにさまざまな努力と工夫がなされてきた。

 全国で栽培されるナガイモ(ヤマノイモ科)は、中国大陸の中部から南部の原産で古い時代に渡来したとされている。その後、栽培品種も多数つくりだされて、それぞれの地方の特産品となっている。

 自然薯(じねんじょ)と呼ぶ野生のヤマノイモ(山の芋)は、葉の形や茎の色、果実の大きさでナガイモと区別ができる。


写真6-162 千曲川の砂泥地に広がるナガイモ畑