長野市は、長野県の北部に位置し、総面積404km2におよぶ大きな市である。その環境を大きく分けると、市街地や集落、田畑の広がる標高360m前後の長野盆地と盆地をとりかこむ三つの山塊(さんかい)に分けられる。
一つは、犀川より北側の飯縄(いいづな)山を頂点とする山塊で、もう一つは犀川より南側の聖(ひじり)山につらなる茶臼(ちゃうす)山の山塊である。三つめは、盆地の南東側に当たる菅平高原や上信越高原国立公園の山々につらなる山塊である。これらの環境に応じて、さまざまなけものたちが生活している。
長野市街地は、近年ますます開発され、ホテルやデパート、マンションなど大きなビルがふえている。鉄筋コンクリートの建物は、クマネズミやアブラコウモリなどがすみかやねぐらとして使うことがある。
市街地近郊の住宅地には、ドブネズミやハツカネズミがすみつく。水田や田畑のまわりには、人家からの残飯や畑の作物などをねらい、タヌキやキツネ、ネズミのなかまやモグラのなかまが姿を見せる。
飯縄山の山塊では、大峰山の広葉樹林にムササビが生息している。旭山付近ではホンシュウジカが姿をあらわす。飯綱高原のカラマツにかこまれた別荘地には、しばしばリスが姿をあらわし人気者になっている。別荘地の建物や、小鳥の巣箱などは、しばしばヤマネの冬眠場所としても使われる。この山塊で哺乳動物の種類、数とも一番豊富なのは標高700mから1,500mの広葉樹の林である。一般に標高1,000m以下を山麓(さんろく)の林、1,000m以上を低山帯という。飯縄山の広葉樹林では、ジネズミ、ヒミズ、カワネズミ、ヒメネズミ、ハタネズミ、ヤチネズミ、カゲネズミ、ヤマネ、ノウサギ、リス、タヌキ、キツネ、テン、イタチなどの哺乳類が確認されている。大型の哺乳動物ではツキノワグマが生息しており、飯綱高原の別荘地にも姿をあらわす。隣接する牟礼村や信濃町では人里にも姿をあらわしている。また、七二会(なにあい)地区で海外からの移入種と思われるハクビシンが確認されている。
聖山につづく茶臼山付近の雑木林は、山麓の林と呼べる。この山塊では、ヤチネズミ、ハタネズミ、アカネズミ、ヒメネズミ、ノウサギ、リス、タヌキ、キツネ、テン、イタチなどを確認している。
菅平につづく保基谷(ほきや)岳の山塊には、カモシカやホンシュウジカ、イノシシ、ツキノワグマなどの大型のけものもすんでいる。とくに特別天然記念物のカモシカは、真田町に抜ける地蔵峠や菅平にのぼる保科沢で、しばしば観察することができた。また、ニホンザルが生息しているのもこの山塊の特徴である。この山塊の山麓の林、低山帯の林では、ジネズミ、ヒメヒミズ、ヒミズ、ハタネズミ、ヒメネズミ、アカネズミ、ヤマネ、ニホンザル、ノウサギ、リス、タヌキ、キツネ、テン、イタチ、カモシカなどの動物を確認している。