ツキノワグマ (食肉目 クマ科)

434 ~ 435

ツキノワグマは世界のクマのなかでは中型のもので、アジアやロシアの北部にも分布する。本州ではイノシシと並んで最大級の陸上哺乳動物である。木の実の豊富な広葉樹林に生息する。木登りがうまく、枝を折ってドングリやクリを食べる。食べあとには「クマのたな」が残り、生息を知る手がかりとなる。近年、森林の伐採などにより食物が不足し、人里にあらわれることが多くなった。

 長野市では飯縄山麓をはじめ、七二会・小田切地区、若槻吉地区、松代地区に目撃情報がある(図7-8)。飯綱高原に生息する唯一の大型哺乳動物であるが、ツキノワグマが生息するには広大な広葉樹の林が必要であり、クマが生息するということは飯縄山麓が一級の自然を保つ証拠でもある。飯縄山麓の信濃町や牟礼村では人里にまでクマがあらわれ、農作物だけでなく人間にまで被害が出ている。小学生や中学生が通学にクマよけの鈴を持ち歩くほどである。

 飯綱高原でも被害が心配されるわけであるが、クマが人里にあらわれるのを防ぐには、これ以上広葉樹の林を伐採しないこと、果実が十分実る広葉樹林を回復すること、残飯の管理をしっかりすることなどが必要であろう。


写真7-13 ツキノワグマ