タヌキ (食肉目 イヌ科)

435 ~ 436

都市部の市街地から、農村部、山間地、高原の観光地まで広く分布している。

 餌は主に人家からの残飯やトウモロコシなどの作物である。昼のあいだはササやぶや人家の縁の下、石の積んである中などにじっとしており、日没直後から日の出直前まで活動する。夜活動しているあいだにも、うずくまって寝ることもある。昼間のすみかを泊まり場というが、泊まり場の近くには、トウモロコシや残飯などをもってきて食事をする場所や、ため糞(ふん)場がある。タヌキは、何個体もが、同じ場所に糞をするのでため糞になる。

 タヌキの社会は、夫婦のペアと独身の雄が単位になっている。小県郡東部町の和(かのう)地区において、1990年(平成2)4月から1991年8月まで、のべ15頭のタヌキに発信器をつけその行動を追ったところ、行動圏の大きさは6.4haから218.2haであった。その広さは、個体によって30倍以上の違いがみられたが、ペアは人家のまわりに比較的小さな行動圏を、独身の雄は山側のほうまで大きな行動圏をかまえていた。これは、子育ての必要なペアが、食物の豊富な人家やトウモロコシ畑の近くに行動圏をもつためである。


写真7-14 タヌキ


写真7-15 タヌキの子

 長野市でも、平地から山間部まで広く分布している(図7-5)。最近では、権堂や石堂町などビルの立ちならぶ市の中心部にまで姿をあらわしている。街のなかでは、土管のなかや側溝のなかなど、人工物を泊まり場として利用しており、食物もほとんど残飯でまかなっている。ますます、人の生活に結びついて分布を広げているようである。目撃例からみると、集落が点在する山間部で生息密度が高いようである。千曲川など大きな川の河川敷にも生息している。


図7-5 タヌキの目撃および事故死体発見地点の分布

 トウモロコシなどの畑の作物や人家からの残飯、カエル、木の実などなんでも食べる。飯綱高原の大池などでは、水を抜いたため池に姿をみせタニシを食べたあとが観察できた。

 とても交通事故にあいやすい動物で、国道18号や、19号、山間部の道路で、事故による死体が多数発見されている。