日本では唯一のジャコウネコ科の動物である。台湾やインドなどではよく見かける動物で、形はタヌキに似るが、尾が長く、顔の中心に白いスジがある。下伊那の一部にしか生息しない「珍獣」ということで1975年(昭和50)、県の天然記念物に指定されたが、その分布を急速に拡大し、果樹の食害が増えたため、1995年に天然記念物の指定を解除された。
日本では、1943年に静岡県ではじめて発見され、その後、東北地方、四国ととびとびに見つかっている。このようなことから、人間によって外国からもちこまれた動物ではないかと考えられている。
長野県でも1955年に静岡県に隣接する下伊那郡で見つかり、ついで1971年に木曽谷でも確認されている。1978年には、茅野市の蓼科(たてしな)高原で保護されている。1990年10月には立科(たてしな)町で確認している。山梨県では1955年ごろに生息が確認されている。佐久地方では、野辺山(のべやま)で1969年に2頭が捕獲されている。長野県にはこのように伊那谷や木曽谷を北上してきたものと、山梨県から北上してきたものがある。いまでは新潟県でも確認されているが、長野市では七二会地区で、2例の目撃情報があった(図7-7)。
木登りが得意で、果物が好物なので、個体数が増えると、リンゴなどの果樹への被害が心配される。