ニホンカモシカ (偶蹄(ぐうてい)目 ウシ科)

442 ~ 442

古いかたちの動物で「生きた化石」ともいわれ、1955年(昭和30)に国の特別天然記念物に指定された。また、長野県のけものとして親しまれてきた。やっと保護の手が差しのべられたと思ったら、最近では植林木を荒らす害獣として、駆除される地域さえある。

 「シカ」の名がつくが、ウシのなかまであり、温和でおとなしい動物である。カモシカはシカと違い、なわばりをもち、決まった範囲のなかで生活している。その単位は、番(つがい)とそのこどもの3頭、または、母子の2頭である。単独で生活するものもいる。食物は木の葉や小枝、草などであるが、食物の多い地域と少ない地域では、なわばりの大きさが違う。アルプスのように、冬季間の餌の確保が容易でないところでは、広大ななわばりが必要である。

 長野市では、菅平につづく保基谷(ほきや)岳の山塊にのみ分布する。最近ではかなり標高の低い千曲川の河川敷にまで姿を見せている。とくに松代町の周辺で目撃例が多い(図7-8)。地蔵峠でも、道路をわたるカモシカを2回目撃している。また、保科沢の通称「鬼の露次」でも、岩場を横切るカモシカがしばしば観察できる。地蔵峠を越した小県郡真田町では、ヒノキの植林木が食害を受け、数年前からカモシカの捕獲がおこなわれている。長野市でも、植林木や作物への食害が心配されるが、長野オリンピックを機に、特別天然記念物であり長野県獣であるカモシカを観光面で利用していかれればと思う。大室(おおむろ)地区では、イヌに追われるカモシカが目撃されているが、カモシカが安心して裏山に姿を見せることができるような環境にしていきたいものである。


写真7-24 カラマツ林内のカモシカ