前述のように長野市の山間地を4地域に分け、そこの森林にすむ鳥の種類数と種類構成をみた。
図7-14に示したように、飯縄山麓(いいづなさんろく)がもっとも多く69種類で、2番目が犀川南部西山の60種類で、3番目が東部山地の43種類、もっとも少なかったのが犀川北部西山の33種類だった。種類数の多少は、原則的にはその地域の森林の豊かさや貧弱さに影響されるが、観察回数にも影響される。
飯縄山麓は広大な森林を擁している。大座法師(だいざほうし)池の周辺はゴルフ場やスキー場などの草原が広がり、平坦(へいたん)部には40~50年生ぐらいのカラマツの植林地があり、そのなかに別荘やペンションなどが点在する。登山道に沿って、山頂に向かって登っていくと、すぐにミズナラやシラカンバなどの雑木林に入り、さらに登って駒繋(こまつな)ぎ場・笠山周辺ではミズナラやダケカンバ、カエデ類の大木の林が見られる。そして、さらに登ると森林限界にいたり、その上部はお花畑の草原となる。
飯縄山麓で観察した特徴的な種類をみると、イワヒバリ、クロジ、ニュウナイスズメなどがあげられる。イワヒバリは飯縄山山頂部の草原と岩場で観察されたが、このような場所は標高の関係でほかにはない。クロジは駒繋ぎ場周辺から、その上部にかけての下草にササが混じるような明るい森林内にいて、夏には登山道からも、ホーイチュチュピーという特徴のある囀(さえず)りが聞こえてくる。ニュウナイスズメはカラマツ林内の別荘やアカゲラやアオゲラのあけた樹洞(じゅどう)(木のうろ)で繁殖しているのが観察される。
犀川南部西山は、標高600~800mの低い山並みのつづく、共和、信里、信田地域で、森林そのものもクヌギやコナラ、アカマツなどがモザイク状に続く二次林である。また、山は深くなく、集落があちこちに点在する。このような多様な環境は、鳥にとってもすみよいようである。しかし、この地域を特徴づけるような鳥はなかった。
東部山地には長野市で2番目に高い保基谷岳(1529.1m)や3番目に高い妙徳山(1293.5m)もあり、東へつづく山は急峻(きゅうしゅん)で深く、森林も豊かである。妙徳山の山頂部には、ブナの若木も密生している。この山塊の沢には大きな岩石が積もっているところが多く、水場の表出している場所が少ない。この地域での調査はまだ不十分で、調査もれの鳥もあると思われるので今後の調査に期待したい。
犀川北部西山は、犀川と裾花川のあいだにある集落の点在する地域で、陣場平(じんばだいら)山(1257.5m)や富士ノ塔山(992m)がある。山間地全体に集落の点在する地域で、林もすべて二次林で、とくにこの地域を特徴づける種類は観察されなかった。