巣を発見できた計31種について、千曲川での典型的な営巣環境の概要を図7-17に示した。コチドリ、イカルチドリ、コアジサシは、いずれも草の生えていない砂れき(礫)地に巣をつくる。しかし、体が大きく警戒心が強いコアジサシは、より安全な中州の砂れき地に集団で営巣し、捕食者に対して集団で防衛する。砂れき地に草が生えてくると、イソシギやヒバリが草の根元に巣をつくり、繁殖する。また、流木の下などに、セグロセキレイが巣をつくる。さらに草が密に生えて、背の低い草原に変化すると、イソシギやヒバリが営巣できなくなり、かわってセッカ、コヨシキリ、ホオジロなどが草のなかに巣をつくる。ヨシやオギといった背の高い草原には、オオヨシキリ、ヨシゴイが巣をかける。
草原のなかにノイバラやヤナギ類などの藪(やぶ)や低木が入りこむと、モズ、ホオジロなどがそのなかに巣をかける。木が高くなるにつれ、キジバト、オナガが巣をかけるようになる。草原と藪が混在するようになると、キジ、カルガモが草や藪の根元に巣をつくる。木が大きくなり林を形成すると、ササゴイ、ハシボソガラスが巣をかける。さらに木が大きくなると、ハシブトガラス、トビが営巣を始める。
このように、鳥の種類ごとに巣をつくる環境が異なっており、河川環境の遷移(せんい)とともに繁殖する鳥の種類も変わっていく。
河川で観察される鳥は、河川の利用形態から、(A)主に河川の水辺で生活する鳥、(B)河川内だけでなく、河川外にも生息している鳥、(C)主に河川外で生活しており、採食やねぐらをとるために河川を訪れる鳥、(D)渡りの途中一時的に河川に立ち上る鳥に区分することができる。以下、それぞれのグループの鳥について概説する。