クロサンショウウオ

476 ~ 476

戸隠の湿原や、菅平の湿原には多数生息するが、長野市では皆神(みなかみ)山山頂にある皆神神社の池付近に生息しており、市指定天然記念物となっている。

 戸隠や菅平が標高1,200mあまりであるのに対し、皆神山の標高が600mあまりとたいへん低く、自然分布としては不自然さがある。皆神神社は718年に建立され、1500年代には修験道(しゅげんどう)が盛んになって水が必要になり現在の池が造られたとのいい伝えであり、戸隠または菅平のクロサンショウウオが移入された人為分布の可能性が高いと思われる。

 皆神山のクロサンショウウオの産卵は、2月下旬から3月上旬にかけておこなわれ、戸隠や菅平より一月あまり早い。産卵は、ヒキガエルのように1ヵ所に多数の個体が集まっておこなわれ、雌は寒天質に包まれたアケビ形の1対の卵塊を産む(写真7-114)。一卵塊には30~40個の卵が入っている。卵のう数は、1992年(平成4)から1994年までの3年間で、100個以上あったものから30個以下まで激減しており(図7-20)、絶滅の危険がある。減少の原因は、神社西側に隣接した林がゴルフ場として開発され、成体の生活場所を奪ってしまったためと思われる。現在では、境内のみが成体の生活場所であるので、これ以上生活環境が破壊されないよう、細心の注意が必要である。


写真7-114 クロサンショウウオの卵のう
(皆神山)


図7-20 皆神山のクロサンショウウオの卵のう数の経年変化