二枚貝に産卵する魚

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ヤリタナゴやタイリクバラタナゴなどは、ドブガイやカラスガイなどの二枚貝のえらのなかに卵を産みつける、特異な産卵習性をもっている。タナゴ類の雄は、春から秋の産卵期になると、鮮やかな婚姻色(こんいんしょく)に変わり、二枚貝のまわりになわばりを作って雌を導く。成熟した雌は産卵管を長く伸ばし、これを貝の出水管に差しこんでえらのなかに産卵する。いっぽう、雄は入水管から精子を吸いこませ、卵を受精させる。孵化した仔魚は、コイ科の他の仔魚に比べて体制がいちじるしく未分化で、体を動かすことができない。しかし、貝のなかにいれば捕食者から逃れられるし、貝が新鮮な水をつねに循環させてくれるので安全に育つことができる。


写真7-148 婚姻色のあらわれたタイリクバラタナゴの雄


写真7-149 ドブガイのえらで育つタイリクバラタナゴの仔魚