畑と草むらのバッタなど

487 ~ 489

畑のコオロギの代表は、何といってもエンマコオロギである。体長は3cmから4cmで真っ黒、雌は腹部がふくらみ2cmもある産卵管をうしろに伸ばしている。丸くて黒い大きな顔を正面から見ると両眼の上に白い稲妻状の紋が、えんま様のまゆげのようについている。

 6月になると黒い小さな幼虫が畑のごみの下などにたくさんいる。8月には成虫になり、夜行性であるから、夜に畑の地面に接しているウリ類や、芽を出したばかりの野菜の苗を食うので、農家の人びとにとっては大害虫である。よく雌雄で土くれの穴のなかにすみ、秋には外へ出て日光浴をし、体をあたためている。雌は長い産卵管を土中深くさしこみ、あちこちに5~8卵ずつ、かためて産みつける。雄の鳴き方は、鈴をころがしたようにコロコロ…リ…をくり返す。


写真7-164 板の上を歩くエンマコオロギ
(雌)

 畑にはこのほか、オカメコオロギ、ツヅレサセコオロギ、ミツカドコオロギなどもいる。

 畑のまわりの草むらには、オンブバッタやショウリョウバッタがいる。

 オンブバッタは、大きな雌の上に小さな雄が乗り、なかには交尾しているものもいる。成虫は6月末ごろから見られ、10月末には姿を消す。雌は体長4cmもあるが、雄は2.5cmほどで、体重は雌の5分の1以下である。


写真7-165 オンブバッタ

 ショウリョウバッタは、体長が雄で5cm、雌で3cmもある大型で、よく飛ぶ。飛ぶとき、前羽と後羽を打ちあわせキチキチキチ…という音をたてるので、キチキチバッタとも呼ばれている。どちらも、雌は夏から秋に、腹部を半分以上も土にさしこみ、卵を塊状に産みつける。


写真7-166 ショウリョウバッタ

 日当たりのよい草むらにはキリギリスがいる。キリギリスは昔から夏の鳴く虫の代表として、虫かごに入れて飼育された。鳴き声はチョンギース、チョンギースで、良い鳴き声を聞くには、キュウリなどとともにけずりぶしや煮干しをやるとよい。草むらでは、かなり大きなバッタやコオロギまで食べるどう猛さをもっている。

 幼虫は6月末ごろから見られるが、成虫が鳴くようになるのは7月末からで、雄は暑さでしおれている草むらのなかを、ゆっくりゆっくり歩きながら鳴きつづける。体長が5cmもある雌は長い産卵管を土のなかへさしこみ、卵を産みつける。


写真7-167 草むらから出てきたキリギリス

 キリギリスが鳴くような日当たりの良い草原で、小石がごろごろあるような場所では、夜になるとスズムシも鳴いている。

 スズムシは飼育が盛んであるが、市内では若穂、松代、信里、若槻、三才などの雑木林周辺の畑の土手などで、自然の鳴き声を聞くことができる。スズムシは夜行性で、市内では8月下旬から鳴きはじめ、9月に最盛期となる。

 鳴き声はリーン、リーンと鈴を振るような音で、気温が20℃前後のときが、もっともよく鳴く。成虫は雑食性で、虫や草の芽を食べ、雌は産卵管を土のなかにさしこみ、卵を大量に産みこむ。


写真7-168 小石の上で鳴いているスズムシ