平地の池のトンボ

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平地の池には、もともとクロイトトンボ、オオイトトンボ、オツネントンボ、コサナエ、ウチワヤンマ、ギンヤンマ、コフキトンボなど多くの種類がいたが、池の岸のコンクリート化や水草除去のためソウギョ(草魚)を放したりして水草がなくなり、ほとんどのトンボが姿を消している。ただ、忘れ去られたような田んぼのなかの池には、わずかな水草がありクロイトトンボやコフキトンボ、ウチワヤンマ、ギンヤンマなどが見られる。

 クロイトトンボは、初夏から秋まで水面に浮いている水草の上でくらし、水草の茎や葉の組織に卵を産みこんでいる。クロイトトンボは水草や岸の石の上などで羽化するが、羽化すると、いったん水辺を離れ、近くの草むらへ移動し、アブやカなどの餌(えさ)を食べ、体がしっかりすると池に帰ってきて、水面上をすべるように動きまわる。


写真7-177 池で交尾中のクロイトトンボ


図7-22 クロイトトンボの生活範囲

 これに対し、池の岸辺を盛んにパトロールをするように飛びまわるのがコフキトンボで、成虫は6月下旬から夏過ぎまで見られる。成熟すると体の白毛が目立ち、白粉をふりかけたように見える。コフキトンボは卵を水面に浮いている水草にたたきつけるようにして産み落とす。卵は水中で沈むことなく水草に付着し、やがてふ化し幼虫となる。


写真7-178 休憩中のコフキトンボ

 平地の池では、ほとんどヤンマのなかまは見られなくなったが、水草のある庭の小池などへはクロスジギンヤンマがよく飛来する。体長は7cmほどで、昭和30年以前にはごくまれであったが、最近はギンヤンマと交代するようにあらわれた。5月から6月に見られる春のヤンマである。


写真7-179 スイレンの茎に卵を産みつけるクロスジギンヤンマ

 長野市の池で姿を消した代表はチョウトンボで、松代町柴の金井池に多くいたことが知られていた。トンボでありながらチョウのように幅広く紫色の美しい羽をもち、チョウのようにひらひら飛んだ。


写真7-180 羽を休めるチョウトンボ