山麓から里山のチョウ

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山麓(さんろく)から山の中腹に広がる集落と田園地帯には、草むらが多いので、さまざまなチョウがいる。

 春、ヤマブキが咲くころ草むらの上を半透明な羽をもったウスバシロチョウが、グライダーのように、ゆるやかに飛んでいる。幼虫はムラサキケマンを食べ、成虫はネギ、ショウブ、スミレなどの蜜を好む。

 ウスバシロチョウが姿を消すのが6月末で、めすは、それまでに卵を草むらの食草の根もとへ産み落としている。卵で冬越しをする。


写真7-201 ネギの花の蜜を吸うウスバシロチョウ

 ウスバシロチョウと同じころ、家の周辺ではジャノメチョウのなかまがあらわれる。もっとも一般的なのがヒメウラナミジャノメであるが、大型のジャノメチョウやクロヒカゲも飛ぶようになる。どれも日なたを嫌い日陰を好むチョウである。


写真7-202 交尾中のヒメウラナミジャノメ

 ジャノメチョウ類と反対に日当たりのよい草原を好むのがベニシジミで、幼虫は土手のスイバやギシギシを食べている。成虫は、春から秋まで見られるが、春の成虫は明るい紅色で「春型」と呼ばれ、それ以後の成虫は、黒っぽくなるので「夏型」と呼ばれている。

 幼虫時代の日の長さが、13時間以下なら「春型」の成虫が出ることが知られている。


写真7-203 土手にいたベニシジミ「春型」

 モンキチョウも山麓から里山にいるチョウである。春から秋まで4世代を繰りかえしている。成虫の色は黄色が基本であるが、めすには「黄色型」と「白色型」の2型があり、長野市では「白色型」が多い。成虫は、アカツメクサ、クサフジ、コマツナギなどの花を活発に訪れ蜜を吸うとともに、ときには風にのって飯縄(いいづな)山や保基谷岳のような高い山まで飛んでいっている。


写真7-204 アカツメクサの蜜を吸うモンキチョウ