街のガの代表はアメリカシロヒトリである。
昭和20年代、北アメリカから日本へ侵入した「帰化昆虫」で、長野市へは昭和30年代の後半に入ってきた。当時の養蚕農家は桑不足を補うため大量の桑を群馬、山梨方面から購入した。この桑とともに幼虫が入ったものと考えられている。
アメリカシロヒトリは明るい開けた場所にしかすめない「都市型昆虫」で、うす暗い森や緑の多い山間地には入っていけない。卵は葉裏に300~400個かためて産みつけられる。小さいうち(5齢まで)は葉を糸でつづって巣をつくり、そのなかで生活するが、それ以後(6、7齢)は集団を解体して木全体に分散し、1匹1匹で生活する。幼虫はサクラ、クルミ、カキなど手当たりしだい木の葉を食べるので「緑の大敵」などと呼ばれている。
しかし、幼虫1匹が食う葉の量は、他のガやチョウと変わらない。
幼虫が蛹になるときは、乾いた木の幹や物陰で、粗いまゆを作り蛹となる。長野市では図7-28に示すように年に2世代を繰りかえすので、成虫は6月と9月にあらわれ、夜だけ木のまわりを乱舞する。
このアメリカシロヒトリと間違えられるのがモンクロシャチホコで、幼虫は集団でいる。
学校や工場などのサクラが夏過ぎに、葉がなくなり丸裸にされ驚くことがある。木の下へ行ってみると体の長さが5cmもある赤褐色の体に銀色の毛をつけた幼虫が、枝に群がっている。成熟した幼虫は地上に下り、土のなかで蛹となり、翌年の夏前に成虫となる。成虫は白い羽に黒い紋がある美しいガである。