(1) 産卵

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 卵を産むということは種族維持や系統維持に欠かすことができない大切なことである。

 ハムシで一番多い産卵方法は、山麓の雑木林やその周辺に多い、フジハムシ、ルリハムシ、ヤナギルリハムシ、クルミハムシなどでみられる、食草の葉裏に卵を塊状に産みつける方法である。

 成虫越冬を終えたヤナギハムシも、ヤナギの葉に白色の卵をかためて産みつける。卵は白色で、長さ2mmほどの長楕円形で、1回に10数個の卵を塊状に食草の葉裏に産みつける。


図7-31 冬越しを終えたヤナギハムシの成虫

 フジハムシ・ハンノキハムシ・ニレハムシ・ミズギワハムシなども同じように産卵する。

 ヤナギ類の葉裏に卵を産みつけるヤナギルリハムシは、卵と卵のあいだをわずかにあけて塊状に産卵する。

 雌の産卵数をヤナギルリハムシで調べると、約2ヵ月間で合計341個の卵を産んだ。

 産みはじめは毎日産卵するが、あとになるとときどき産む程度となる。このヤナギルリハムシの1匹の雌の産卵で一番多かったのが26卵塊で、平均卵数は13個であった。産卵数が多いものはハンノキハムシで、1匹平均で1,472個の卵を産んでいた。その結果、1卵塊の卵の数は平均58個であった。

 卵を1粒ずつ産む種類もある。それはアスパラガスの葉を食べるジュウシホシクビナガハムシで、このハムシはアスパラガスの針状の葉と葉のあいだに写真7-236のように産卵する。卵には粘液がついているため、細い針のような葉が卵に付着し卵を保護している。


写真7-236 ジュウシホシクビナガハムシの卵

 荒れ地に生えるオオマツヨイグサの葉を食べるアカバナトビハムシは葉や茎に1卵ずつ産みつけ、卵の上に糞をつけ卵を保護する。

 ヨモギの葉を食べるヨモギハムシは、10月中下旬にヨモギの葉や毛状組織のなかへ埋めこむように産卵し、卵での冬越しに備えている。

 カメノコハムシ亜科に属するアオカメノコハムシやジンガサハムシなどは、卵を6~8個積み重ね、その卵塊をパラフィン状の分泌物で固めて、その上に糞をかける。このようにカメノコハムシ亜科に属するハムシ類は、もっとも防御方法が整った産卵習性をもっているといってもよいだろう。

 いっぽう、イタドリハムシやズグロアラメハムシなどのヒゲナガハムシ亜科に属するハムシ類は、土のなかに産卵している。成虫で越冬を終えたイタドリハムシは、5月に入ると土のなかに卵を50個前後塊状に産みつける、土のなかは天敵からの防御ができる環境であるからと考えられる。


写真7-237 イタドリの葉を食べているイタドリハムシ

 今まで述べたハムシ類とまったく異なった産卵習性をもっているのが、ツツハムシ亜科のハムシ類で、直径約0.3mmほどの淡黄色で球形の卵を1個ずつ自分の糞につつんで産む。

 また、アザミオオハムシは秋に、食草であるアザミやフキなどの根元や枯れた茎に、卵を特殊な分泌物でおおい固めて産む。サンゴジュハムシは食樹であるカンボクやガマズミの幹に、樹皮で卵を木の芽状につつんで産みつけている。