トックリバチ(ドロバチ科)

519 ~ 520

 体長は10~19mm。黒色の体に胸と腹に鮮やかな黄色の斑紋(はんもん)をもち、腹部の形が酒の「とっくり」に似ていること、子育てのための巣がとっくり状であるので、この名がついたようである。

 雌は草木の幹やコンクリートの壁、家屋の土壁などに、「とっくり」を押しちぢめた球形の泥の巣をつくる。粘土のある場所を探し、水を吸い込んできて粘土に混ぜ、こねてアズキ粒の半分ぐらいの土だんごをつくる。この土だんごをくわえて運び、頭と口・前足とを巧みに使い、巣の壁塗りをしてつくる。

 この土だんご30個ぐらいで、厚さ1mm、500円硬貨くらいの巣にする。

 巣の入り口をつぼめて細くしてから、漏斗(ろうと)状に開く襟(えり)をつける。巣が乾くのを確かめて、入り口から腹部をなかへさしこんで、巣の天井からごく細い紐に1卵をつりさげて産卵する。大急ぎで獲物狩りに飛び立ち、ガやチョウの幼虫を襲い麻酔し、5~12匹ぐらい巣のなかに狩り集め、入り口を封じる。卵はおよそ5日でかえり2週間で蛹、その後2週間で成虫となり巣の外に飛び立つ。


写真7-243 トックリバチ