オオスズメバチ(スズメバチ科)

520 ~ 521

 日本産ハチ類で最大のハチで、体長は女王バチ40㎜、雄バチ35mm、働きバチ30mmぐらい。その年の気候や環境によって大きさが異なり、女王バチで体長54mmという記録もある。

 一般に「クマンバチ」といわれ、大木の空洞や日当たりのよい土手や崖(がけ)の地中に、枯木や古い材木などをかじり、だ液と樹脂(木のやに)を混ぜあわせて、粗末な洋紙質の巣をつくる。巣はアシナガバチの巣を広くひろげたような巣(巣盤(そうばん))で、この巣を数段から十数段重ね、つまり十数階建ての大きな巣をつくる。最盛期にはハチの数約5,000となり、そのまわりを黄白色や褐色の貝殻を重ねたような模様のうすい紙質で包む。キイロスズメバチでは、軒(のき)下や崖下など、広い空間では直径40cm以上の卵形の巣になる。

 成虫はクヌギ・ナラなどの樹木の傷口に集まったり、完熟した果実(リンゴ、ブドウ、イチジク)を食害する。働きバチは幼虫の餌(えさ)として、チョウ・ガの幼虫からセミ・ハナアブ・ミツバチなどをはじめ、カエルまでも襲い、肉だんごとして運びあたえる。働きバチは攻撃的で、巣の近くを通りぬけたり、走りぬけただけで、襲いかかることがある。

 このハチの産卵管は、産卵や獲物の麻酔用ではなく、もっぱら外敵への攻撃専用の毒針になっている。従来このハチの毒は蟻酸系といわれていたが、もっと毒性が強い蛋白毒(たんぱくどく)であることがわかった。

 そのため、刺された人の体質に大きく関係し、特異体質の人はアレルギー性ショックなどで死亡することもある。もし刺されたときは、すぐに医師の治療をうけることが肝要である。

 秋の終わりになると、若い女王バチと雄バチがそれぞれ数百匹以上生まれ、受精した若い女王バチは枯れ木のなかや地中で越冬し、翌春新しい巣造りを始める。この女王バチは、ミツバチとちがい、巣造り、産卵、幼虫の世話など、働きバチが生まれるまで活動し、その後は産卵だけに専念する。


写真7-245 オオスズメバチの働きバチ