クマバチ(クマバチ科)

522 ~ 522

 雌の体長は25mm内外。丸いだんごを二つ串(くし)にさしたような形をし、頭部と腹部は光沢のある美しい黒色、胸部にはビロード状の鮮やかな黄色毛が密生する。このハチの姿、形がクマに似ていることからこの名がある。羽は光沢のある紫紺色である。

 早春の野山や市街地に一番先にあらわれ、カタクリ、サクラ、フジ、カボチャなど、いろいろな花の花粉や花蜜を集める。巣は枯れたキリ、ヒノキ、スギ、クルミなどの直径5cmぐらいの木に、鋭い大あごで直径15mmほどのトンネルを掘り、さらに木の木目に沿って15~30cmのトンネルを掘る。奥の方から花粉と花蜜をねった花粉だんごを置いて1個産卵すると、すぐに木くずとだ液とで竹の節のような仕切りをつくり、再び花粉だんごをおいて産卵する。こうして、入り口近くまで7~12個ぐらいの巣ををつくる。

 新成虫は初夏と晩夏の2回出現する。初夏は働きバチ、晩夏は新雌バチと雄バチである。これらのハチは、巣から離れることなく社会生活をつづけ、巣のなかで越冬し、翌春、新雌バチと雄バチが飛びたち、花蜜を食べ、交尾し、新しい巣造りを始める。

 春、フジ・リンゴの花の咲くころ、空中に静止するような飛びかたをしているのは雄で、これは一種のなわばり行動である。一見おそろしい感じのハチだが、人を襲うことはない。農薬などの消毒に強く、農作物をはじめ植物の花粉媒介者として、たいへん貴重なハチである。


写真7-247 リンゴの花蜜を集めるクマバチ