水生昆虫の重要な一群をなすトビケラ類は、カゲロウやカワゲラ類と比べると、進化の段階のかなり進んだ昆虫である。このなかまは非常に種類が多い。
カゲロウやカワゲラと違って、トビケラは、卵-幼虫-蛹-成虫と変化する完全変態をする。幼虫のからだは、長い円筒形をしていて、頭部と胸部の一部分がキチン質といわれる硬いものにおおわれ、体の大部分は長くて軟らかい腹部からできている。多くの種類は、巣あるいはからだをおおう筒(筒巣(とうそう)という)をつくって、そのなかに入って生活している。
水中生活をするトビケラの生活には、大きく分けて三つのタイプがある。
第一は、流水にすみ、よく発達した肢で水底の礫(れき)のあいだを歩きまわっているナガレトビケラのなかまである。長野市内の渓流では12種類が見られる。
第二は、流水の底の岩の表面や石のあいだに上流に向かって開いた網を張ったり、ほとんど水の流れない泥の底にU字型のトンネルを掘ってそのなかに網を張り、自分で水流をおこしたりして、流れに運ばれて網にかかった有機物を食べている種類である。造網(ぞうもう)性トビケラと呼ばれており、シマトビケラやヒゲナガカワトビケラなどがその代表である。
第三は、自分の巣を背負って、水底を歩きまわり、水底にたまった落ち葉などを食べているコカクツツトビケラ、クロツツトビケラ、ヤマトビケラなどである。巣の材料は、種類によって違うが、砂粒でつくるヤマトビケラ、植物の葉を小さい方形に切って四角筒状につくるカクツツトビケラ、分泌物のみでつくるクロツツトビケラなど、それぞれすむ場所も違っている。
幼虫は、肉食性のナガレトヒゲラをのぞいて、大部分のトビケラは石の表面に付着している珪藻(けいそう)など藻類を食べて生活している。成長して蛹になるときは、巣をもたないナガレトビケラは、石と石のあいだに自分の体を置き、そのまわりに砂粒を分泌物でかためてから脱皮して蛹になる。巣をもっているトビケラは、石の壁に自分の巣をしっかりくくりつけ、巣の前後の口を閉めてしまう。
やがて成虫になり羽化すると、交尾して、雌は水辺の草の葉の上や水中にもぐって沈んでいる枯木や石の表面に産卵する。