東部山地の陸産貝類

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東部山地は、調査地点も7ヵ所と少ないこともあるかもしれないが、9科25種で西部山地の15科47種の約半分であった。1地点の最高は西部山地では畑山・伺去(しゃり)真光寺の23種に対して山新田の14種。一地点の平均確認種数は西部山地が10.6種、東部山地7種でどちらの数値を比べても、西部山地よりは少ない。かつて筆者は飯田市松川入(いり)で生息する陸産貝類の種数と個体数の間に高い正の相関関係があるという結果を得ている(飯島,1983)。このことはいいかえると、生息種数の多いところは、陸産貝類の個体数も多く陸産貝類の生息地として適していることになる。東部山地の方が西部山地より陸産貝類の生息環境としては適していないといえる。

 ミジンヤマタニシは、長野市では3ヵ所で確認されたが、全県に広く分布している。名前の示すとおり殻高1mm、殻径1.8mmぐらいの微小種で、タニシと同じように真円形ですり鉢状のふたがある。貝殻は半透明で、ガラス光沢があり、へそ穴が大きい。


写真7-281 ミジンヤマタニシ

 オカチョウジガイは西部山地の3ヵ所で確認されている。オカチョウジガイなどのオカクチキレガイ科は長野市内からは3種類確認され、長野盆地に多く生息している。この科の特徴は写真7-282に明らかなように軟体部が黄色で、半透明の貝殻をとおして透けて見えることである。死に殻は白っぽく、キセルガイと間違いやすいが、オカクチキレガイ科は右巻きなので区別できる。また、キセルガイは成貝の口の部分が反転するが、オカクチキレガイ科は反転しない。殻高8mm、殻径3mmぐらい。


写真7-282 オカチョウジガイ

 山野に行ったとき、だれでも陸産貝類として確認できる種として、オオケマイマイがあげられる。初めて見た人は、これがカタツムリのなかまかと驚く。その名が示すとおり、若い貝の殻表には毛のような突起があり、とくに周縁の毛が長く目につく。しかし年数がたつと殻表の毛はだんだんと失われ、やがて周縁の毛もとれて白っぽくなる。生物に備わったものにはむだがないものだが、オオケマイマイの毛はこの貝の生活にどういう意味があるのかまだわかっていない。殻高10~13mm、殻径21~26mmくらいの中型の貝。扁平(へんぺい)でへそ穴が大きいのも特徴の一つである。ブナやクリなど落葉広葉樹の朽ち葉のあいだ、礫(れき)のあいだ、田や畑の土手など広い範囲に生息している。


写真7-283 オオケマイマイ

 東部山地で特筆すべき種としては、スジキビがあげられる。本種はこれまでに北安曇郡白馬村、南安曇郡安曇村、南佐久郡小海町・川上村、飯田市で確認され、県内に広く分布はしているようだが、発見されることはきわめて少ない。そろばん玉のような形をしていて貝殻はうすくこわれやすい。大きさは、殻高2mm、殻径3.5mmぐらい。


図7-37 スジキビ

 以上長野市を西部山地、長野盆地、東部山地の三つの地域に分け、そこに生息する種の代表的なものと、特筆される種について述べてきた。前ページに一覧表(表7-9)として載せたので、今後さらにこのリストに加除修正されることを願う。


表7-9 長野市の陸産貝類調査地点と確認種の一覧表