人間はほかのすべての生き物と同様に、自然がなくては生活できない。地球上に多くの人間が住みついて、生活のためにさまざまな形で環境を変えてきた。自然保護とか環境保護、保全と問題にされる根源は、人口の増加にともなう環境破壊であり、生活環境の悪化が指摘される。
世界的な自然環境の変革は、斧(おの)と鋤(すき)と鍬(くわ)に火や家畜の放牧が動因であり、近代になって農薬が加わったといわれている。森林伐採に斧が使われ、鋤と鍬の発達で農耕地が広がった。開けた環境は、雑草と呼ぶ人里植物におおわれる。燃料採取や焼畑農耕は、いっそう森林をつぶしていった。わが国では、家畜の飼料だけでなく田畑に使う緑の肥料、屋根材などの採草地が各地にできた。そして、農薬は殺虫剤や除草剤だけにとどまらず、大量の各種化学肥料があふれている。
科学技術の発達によって社会は大きく変貌(へんぼう)し、あらゆる場に人為的な環境が広まってきた。1993年(平成5)に公布された環境基本法には、自然環境保全施策の理念として「生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会条件に応じて体系的に保全されること。人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。」などと規定されている。
環境基本法は、今日の環境問題の特質をつぎのように列挙している。
① 通常の社会経済活動による環境への負荷の増大――都市、生活型公害(生活排水、自動車交通による大気汚染など)、廃棄物の排出量の増大、地球温暖化問題など。
② 地球的規模で対応すべき問題の顕在化――地球温暖化、オゾン層の破壊、海洋汚染、熱帯林の減少、野生生物の種の減少等など。
③ 身近な自然の減少など――都市における身近な自然の減少、過疎地域を中心に農地、森林の有する環境保全能力の低下、自然とのふれあいを大切にする国民の欲求の高まり、自然と共生した快適環境(アメニティ)の創造。