火事や地震にも強く、森林のさまざまな働きをもつふるさとの森を、ふたたびつくりだそうと取りくむ自治体や事業所などが増えてきた。長野市では、1992年(平成4)から幼苗植栽(ようびょうしょくさい)手法による植樹が始まっている。
幼苗植栽手法というのは、古くから社寺林や屋敷林として日本各地で実施されてきた緑地整備の一手法に、生態学的な理論づけがされ、質の高い緑をつくりだしていく具体的な植栽手法として体系づけられたものである。
その手順の概要はつぎのようである(「幼苗植栽手法技術指針-ふるさとの森づくりを目指して-」長野市1993より抜粋)。
1)植栽種は、その土地の潜在自然植生(せんざいしぜんしょくせい)の構成種を多種類選定する。長野市周辺は夏緑(かりょく)(落葉)樹林帯であり、ブナ、ミズナラ、コナラ、クヌギ、ケヤキ等々の落葉樹である。
2)有機物や土壌生物が豊かに含まれている表土(ひょうど)を大事にする。これを確保し復元して植土とする。
3)郷土樹種の2~3年生ポット苗を、1m2あたり2本ほどの高い密度で植えつける。
4)地表面の乾燥防止、温度変化の緩和、雑草をおさえるなどを目的に、敷きわらによるマルチングをおこなう。
5)植栽後2~3年は雑草抜きをおこなう。
幼苗植栽手法の特徴はつぎのようである。
1)その土地に適した樹種を植えるので災害や病虫害に強く、自然の多様性が確保できる森となる。
2)ポット苗を使うので根を傷つけず、根がよく張って成長する。密植することによってたがいに競争し、助けあって成長が早い。
3)小さな苗はこどもでも植えられ、狭い土地や急斜面でも植樹できる。維持、管理費用や労力をかけなくて森になる。
・ポット苗の生産
まざりけのない遺伝子を保存することは、環境保全でもっとも注意すべきことであり、自然に近い森をつくりだすには、遺伝子について十分な配慮が必要とされる。遠くから安易に苗木を取りよせることは絶対避け、「ふるさとの木による、ふるさとの森づくり」がもっとも重要なことである。長野市で取りくんでいるふるさとの森づくりは、郷土のドングリ拾いから苗木を育成するもので、長野方式とも呼ばれ高く評価されている。