河東の扇状地

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千曲川は若穂の牛島、標高三三九メートルで双子川の犀川と合流し、川幅が一キロメートルと氾濫原がいっきょに広がる。善光寺平の千曲川右岸は河東地方とよばれている。若穂の保科扇状地は、保科川と赤野田川が形成した複合扇状地で、上流に二段の河岸段丘を発達させ、扇端部は塚本で千曲川氾濫原の後背湿地に接している。上流では保科川が扇状地面を深く刻み、矢原から下流では天井川が発達し、千曲川の後背湿地のなかまでのびてきている。なお、綿内の妙徳山東麓の山新田から大柳にかけては急勾配な崖錐地形(沖積錐)が発達している。

 この若穂の北から、須坂市、小布施町にかけては上信国境の山々に源を発する川によって、扇状地が発達している。須坂市には鮎(あゆ)川・百々(どど)川の扇状地、そして高山村・小布施町・須坂市には松川の扇状地が形成され、長野盆地を西側に押しつけている。なお、活火山の白根山から流れでる松川は百々川とともに強酸性で鉄分が多い。

 若穂の南の松代では東部山地から流れでる藤沢川・蛭川・神田川が複合扇状地を形成し、松代城下はその扇端部にあたっている。また、藤沢川と蛭川は皆神山背後の上流部にも急傾斜の扇状地を発達させ、この川が扇状地面を下刻して二段の河岸段丘をつくった。松代町豊栄(とよさか)の牧内・桑根井・平林は上位段丘で、下位段丘は皆神山の下流側に連続している。


写真4 盆地を流れる二つの大河
手前が千曲川、中央が犀川、左上方は飯綱山
協同測量社提供