自然堤防

17 ~ 18

更埴市に入った千曲川は北西に流れていくが、千曲川よりも運んでくる土砂の多い犀川の運搬物によって形成された犀川扇状地のために東部山地の縁に押しやられ、杭瀬下でほぼ直角に流れを北東に変える。この犀川と千曲川とのあいだにはさまれた川中島を形成した。そのために千曲川は犀川扇状地でダムアップされたような状態となり、合流点より上流で曲流が目立ち、勾配(こうばい)が九〇〇分の一から一〇〇〇分の一とゆるやかになり、洪水のおきやすい地形になっている。水温も高くなり河川環境が一変する。このために、盆地の平坦部は千曲川左岸で広く、右岸側で狭い。

 そしてその両岸に幅五〇〇メートルの自然堤防と広い後背湿地を発達させる。右岸の更埴市雨宮(あめのみや)低地に沢山川が流れこみ、左岸には篠ノ井の塩崎から横田にかけて長さ五キロメートルの自然堤防とその背後に石川低地などの後背湿地があり、そこに聖川が流れこむ。ここから千曲川は南北三〇キロメートルの善光寺平を流れくだっていく。

 川中島では犀川扇状地によって自然堤防は発達せず、裾花川扇状地の扇端部である大豆島・朝陽屋島から長沼地区の赤沼にかけて約一〇キロメートルにわたって自然堤防が形成されていく。ここは、河床より三~四メートル高く、幅が一キロメートル以上もある大規模な自然堤防である。

 自然堤防上は褐色低地土が帯状に分布し、地下水が比較的低く、下層に砂礫層があって排水がよいため、集落が形成され、畑地に利用される。果樹栽培がおこなわれ、松代岩野付近では長芋などの野菜栽培の適地となっている。

 後背湿地は灰色低地土で、水田化かすすんでいるために下層には鉄・マンガンの集積が認められる低地水田土と、地下水の影響を強くうけた泥炭土、グライ土が分布している。泥炭土の多い若穂の綿内温湯の山麓沿いには蓮(はす)田がある。

 なお水田に適したグライ土は、排水が悪く畑作には適さないが、信更町の聖川、若槻・古里方面の浅川・駒沢川、若穂の保科川、松代の蛭(ひる)川、神田川などの流域に分布している。