列島化した自然

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今からおよそ一万二〇〇〇年前に最終氷期が終わると、やがて日本海が形成され、日本列島が成立する。日本海からもたらされる湿気が植生を変え、食料にもなるブナ・クリ・コナラなどの落葉広葉樹が繁茂する湿潤なモンスーン気候に変わった。また冬には日本海側を中心に大雪が降るようにもなった。これらの森にはシカ・イノシシなどが生息し、森から流れでる川には夏から冬にかけて、毎年マス・サケが日本海から溯上(そじょう)してきた。

 縄文文化は豊かな森を舞台に一万年もの長いあいだ、独自性の強い狩猟・採集経済を発展させつづけた。これは、日本列島が成立した時点で、栽培に適する植物や家畜化できる動物が存在しなかった点と、それ以上に食料となるクリ・ドングリ・ワラビなどの豊富な植物があり、シカ・イノシシなどの動物がいたからである。