葛山落合神社境内社の諏訪社社殿

1025 ~ 1026

葛山落合神社本殿の南東にある境内社(県宝)は、明治末年に合併されてこの地に移されたと伝える。低い石垣の一段高い位置に、石の柵(さく)で囲われている。切石の礎を並べて土台をおき、その上に建つ。本殿と同じ一間社隅木入春日造りで、柿葺(こけらぶき)、箱棟で鰭付鬼板である。規模は小さく様式も略式の素木(しらき)造りで、階(きざはし)は五段、縁(えん)は付かない。向拝柱は几帳面取(きちょうめんとり)(本殿は大面取)で、向拝は貫の先端である絵様付き木鼻の上に皿板付斗がのり、その上に連三斗がある。木鼻の渦巻絵様は室町時代の様式である。向拝の連三斗(つれみつと)にある実肘木の先端(刳形)は鯱(しゃち)の顔となっている。これと似たものが飯山市の白山神社本殿(一間社隅木入春日造り、彩色)にあり、向拝柱の桁(けた)先が魚(鯱)の顔になっている。どのような関係か興味深い。肘木は禅宗様式のカーブで、「笹刳(ささぐり)」がある。母屋柱は円柱で、縁長押(えんなげし)、腰貫、内法(うちのり)長押、台輪(だいわ)を通す。正面は前面が格子、他の三面は横板壁である。母屋は実肘木付きの出三斗(でみつと)とした簡単な組物で、一軒繁垂木(いっとのきしげだるき)の先端はかなり上方に反り、増(まし)がほどこされている。中備(なかぞなえ)(束(つか)・蟇股(かえるまた))はない。母屋と向拝をつなぐ繋虹梁(つなぎこうりょう)は直線で、一重眉切(まゆきり)をほどこしている(本殿は海老虹梁)。正面の妻は縦板壁(本殿は木連格子)、拝懸魚は猪ノ目懸魚である。

 背面は豕扠首で、眉切(まゆきり)の破風、懸魚は三つとも猪ノ目懸魚である。かなり修復されているが、一間社隅木入春日造りの小社として貴重である。


図15 向拝部組物と六枝掛(ろくしがけ)


写真4 葛山落合神社境内社の諏訪神社社殿
西南全景、素朴な隅木入春日造り


図16 白山神社本殿の向拝部分の組物(飯山市)
頭貫の先端肘木に皿板がつく。桁の先に鯱の刳形(くりがた)・絵様(えよう)がある。