図35の用語解説

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図35 建築専門用語解説図(流造りの側面)

1.鳥衾(とりぶすま)…鬼板の頂きにのる材(斜めに反る)

2.鬼板(おにいた)…箱棟の端につく大きな板、鰭付(ひれつき)、鬼瓦に同じ。

3.釘隠(くぎかくし)…懸魚(げぎょ)を止める釘(くぎ)の頭を隠す木製で「六葉(ろくよう)」が一般的である。

4.拝懸魚(おがみげぎょ)…妻の最上部にある懸魚(げぎょ)。棟木(むなぎ)木口(こぐち)を守るために付けた板で飾りも兼ねる。鰭(ひれ)付もあり。一般的には「蕪(かぶら)」か「猪ノ目(いのめ)」である。

5.渦巻文様(うずまきもよう)…木鼻(きばな)や実肘木(さねひじき)の側面に施された浅い彫刻(絵様(えよう))。「渦巻(うずまき)」は室町時代の特徴

6.大瓶束(たいへいづか)…丸くて太い束(つか)、瓶(びん)を逆さまにした形。束の一種、構造材

7.結綿(ゆいわた)…大瓶束と梁の仕口(しぐち)(接続の仕方)、綿の花に似る。

8.降懸魚(くだりげぎょ)…桁(けた)の木口(こぐち)を守るために付ける板、飾りでもある。

9.竹ノ節(たけのふし)…袖壁(そでかべ)の支え柱が上の桁まで伸びる。その柱が「竹(たけ)の節(ふし)」のデザインとなるから。

10.袖切(そできり)…虹梁の両端を削り、「斗(ます)」で受けやすくする。その形が袖(そで)のようである。

11.肘木(ひじき)…日本建築で軒などを支える組物を斗栱(ときょう)という。その腕木(うでぎ)、肘(ひじ)に例えた。上に「斗」をのせる。

12.虹梁(こうりょう)…やや上に反った梁(はり)、虹に例えた。とくに太いのを「大虹梁(だいこうりょう)」という。

13.眉欠(まゆかき)…虹梁などの下端を縁(ふち)に沿って削り落とす。装飾の一種

14.頭貫(かしらぬき)…柱の上部を繋(つな)ぐ横の材

15.長押(なげし)…柱をはさむようにして繋いだ横材

16.脇障子(わきしょうじ)…切目縁(きりめえん)の最深部にあるついたての板壁

17.高欄(こうらん)…切目縁に付けた手擦(てすり)

18.切目縁(きりめえん)…周囲につけた縁側、縁板の木口(こぐち)を外に向けて並べる。

19.縁束(えんづか)…縁側を支える束

20.母屋柱(もやばしら)…建物本体の柱、円柱が多い(床下は八角形か)。

21.土台(どだい)…礎石の上にのる横材。建物の重さを支える。

22.横板壁(よこいたかべ)…板を横に張った壁。禅宗様式だと「竪(たて)板壁」

23.浜床(はまゆか)…階前の低い床、「浜」は平らの意味

24.階(きざはし)…木の階段。高いと昇高欄(のぼりこうらん)がつく。

25.擬宝珠(ぎぼし)…高欄正面の親柱の頂部でネギ坊主形のもの。古いものは三角形のようである。

26.跳高欄(はねこうらん)…高欄の隅部で架木(ほこぎ)が外へ出て、上方に反る。

27.面取(めんとり)…方柱の角(コーナー)を削る。「面を取る」という。「几帳面取(きちょうめんとり)」「糸(いと)面取」「大(おお)面取」などその「面」の形で呼び名がある。

28.向拝柱(ごはいばしら)…正面の階段のところの柱、かならず方柱で、面取がされる。

29.蟇股(かえるまた)…頭貫の上にのる蛙(かえる)に似た束。構造材は「板蟇股(いたかえるまた)」、装飾としては「本(ほん)(透(すか)し)蟇股」となる(図は本蟇股)。

30.桟唐戸(さんからど)…数本の桟(さん)に板を張った戸(扉)。禅宗様式の戸、和様式は板戸

31.象鼻(ぞうばな)…貫の木鼻の意匠が「象の顔」のもの、向拝柱の横外側

32.大斗(だいと)…柱上の大きな斗(ます)

33.連三斗(つれみつと)…肘木(ひじき)に斗が三つの組物、横に長い斗栱(ときょう)

34.粽(ちまき)…柱の最上部が丸みをおびる。禅宗様式(柱の下部も同じ)

35.桁(けた)…高い位置の横の構造材(向拝部分の桁)

36.繁垂木(しげだるき)…配置の空きが小さい垂木の並びかた(垂木幅と空きが等しい)

37.鯖尻(さばじり)…虹梁の接続のときの上方、破風の先端に付けられた魚の尾形のもの。また、破風先端に刻まれた陰刻の三角形で魚の尾の形に似る。

38.桁隠(けたかくし)…桁(けた)(向拝)の位置の懸魚(げぎょ)

39.破風板(はふいた)…切妻側の屋根端の板(押さえである。風を抑えるから破風板か)

40.海老虹梁(えびこうりょう)…母屋(もや)と向拝を繋ぐ斜めの梁(はり)、エビのように曲線となる。

41.皿板付斗(さらいたつきます)…皿(さら)形で上に斗が付く。大仏様式

42.拳鼻(こぶしばな)…拳(こぶし)に似た木鼻で刳形(くりがた)がつく。

43.刳形(くりがた)…木鼻の形など立体的な彫刻

44.実肘木(さねひじき)…斗(ます)上にありじっさいに桁の力をうける肘木(ひじき)

45.丸桁(がんぎょう)…母屋の桁を「がんぎょう」とよぶ。古くは丸い桁であった。

46.笈形(おいがた)…妻飾り、大瓶束の左右の①曲線の彫刻(蟇股の形に似る)、②絵で壁に描いた飾りの曲線

47.花肘木(はなひじき)…大瓶束(たいへいづか)の上部に左右に付けた飾りで拳(こぶし)形、「花(はな)肘木」に例えた。

48.板葺(いたぶき)…薄い板を数枚重ね葺く。

49.箱棟(はこむね)…大棟にのせた箱形の棟

50.鰭(ひれ)…鬼板や、懸魚の左右につく飾り

51.鬼面(おにめん)…木製の鬼(おに)の顔(面(めん))、鬼板につく。信州中世の建築の特徴

52.錫杖彫(しゃくじょうほり)…海老虹梁の下面に刻んだ装飾の溝、杖(つえ)の頭の形

53.縋破風(すがるはふ)…母屋または庇(ひさし)の屋根がそのまま前方へ突きだした部分の破風の呼び名