絹本著色釈迦三尊像(しゃかさんぞんぞう)

1063 ~ 1064

県宝 一四世紀 元善町 善光寺本坊大勧進蔵 絹本皆金色、切金、彩色 軸装 縦九五・〇センチメートル、幅三九・八センチメートル

 如来の肉身部は皆金色、着衣部には精緻な切金による文様がほどこされ、肉身線には朱彩がうかがえる。輪郭が角ばり、目尻をつりあげたきびしい表情の顔立ちは、鎌倉時代の特色をよく示している。画面のようすをくわしく見ると、如来の背後は、二重円光背とさらに大きな円光であらわされ、墨線による放射光が描かれている。そしてその前には背もたれが描かれている。画面最上部の六角笠形の天蓋(てんがい)は薄紫色、六角形の台座、蓮華座は緑色を主体に描かれている。なお台座の前部には、敷物の上に三足香炉がおかれ、その左右に脇侍(きょうじ)が描かれている。しかしその配置のしかたは通例とは異なり、向かって右に騎象普賢(きぞうふげん)菩薩、左に騎獅子文殊(きししもんじゅ)菩薩となっている。文殊菩薩は皆金色で如意、普賢菩薩は白身で蓮茎をとり、ともに二重の円光を負う。画面全体の彩色は、緑系の寒色で統一されている。

 本図の特色として、如来の背後に背もたれが描かれている点はめずらしい表現としてあげられる。また三足香炉や脇侍の下に敷かれている台形の敷物は、画面の遠近感をあらわすのには効果的な描法であること、さらに皆金色や切金の技法は、中世仏画の特色のひとつであるが、華やかさをおさえ緑色系を主体とした彩色はきわめて地味であること、などがあげられよう。製作年代は鎌倉時代後期と推定される。

 このほか大勧進には、未指定ではあるが注目されるものとして、「絹本五髻(ごけい)文殊菩薩像」「絹本著色五大力菩薩像」「絹本著色日吉山王(ひえさんのう)曼荼羅図」「絹本著色千手観音及二十八部衆像」など、鎌倉・南北朝時代にさかのぼる貴重な仏画が収蔵されている。