銅造観音菩薩立像(どうぞうかんのんぼさつりゅうぞう)(口絵参照)

1066 ~ 1067

重文 七世紀後半 若槻吉山千寺 丸山茂ほか四氏蔵

銅製、鋳造 蠟型(ろうがた)一鋳 像高二九・七センチメートル

 大きめの頭部、短軀(たんく)のプロポーション、そして童子形の笑みを浮かべた面貌(めんぼう)は、白鳳(はくほう)時代七世紀後半の小金銅仏の特徴を示している。

 頭頂は短髻(たんけい)、地髪部はこまかに刻んだマバラ彫り、頭上には三面頭飾(さんめんとうしょく)、冠帯(かんたい)をつけ、正面は蓮華(れんげ)座上に化仏(けぶつ)の浮き彫りを刻む。上半身は天衣(てんね)、胸飾り瓔珞(ようらく)をつけ、左手は側面にそって垂下(すいか)し、五指をかるく伸ばし、右手は屈臂(くっぴ)して持物(亡失)をにぎる。両脚部はそろえて蓮華座上に立つが、天衣には連珠文、胸飾りにも連珠二条文、花形飾り、紡錘形、瓔珞などの装飾を凝らしている。とくに腰部の裳部にほどこされた衣文(えもん)の装飾的なつくりは、白鳳時代の様式をよく残している。台座の蓮華座上部は単弁素文、反花(かえりばな)は複弁、框座(かまちざ)は八角形、上面に波形の文様、側面に格狭間(こうざま)を透かしている。また台座は大振りで堂々としている。

 鋳造方法は、像部、台座をふくめた蠟型一鋳で、現状では、鍍金(ときん)の痕跡は確認されない。全体に保存状態は良好で、県下では数少ない古代金銅仏の優品として注目される。