重文 一〇世紀初期 松代町西条 清水寺蔵 桂材 一木造 彫眼 肉身漆箔、着衣古 色塗 像高一五七・〇センチメートル
本尊の千手観音の右脇に安置されている等身大の比丘形(びくぎょう)像である。地蔵の典型を示すように、左手に宝珠(ほうじゅ)をもち、右手は腰脇で錫杖(しゃくじょう)を執る。桂の一木から彫成し、内刳りをほどこさない個性的な作風は、左脇に祀られる観音菩薩と共通するので、同じ作者による像造とみてまちがいないであろう。
俯瞰(ふかん)した頰張りの強い個性的な面貌、厚みのある幅広の肩張り、そして衲衣(のうえ)に刻まれる力強い衣文(えもん)など、堂々とした彫成で迫力が感じられるが、両手先は江戸時代の補作である。なお肉身部は漆箔(しっぱく)、衲衣部は古色塗である。製作年代は観音菩薩と同様に一〇世紀初頭とみてよいであろう。
このほかに注目される同時代の作として、堂内の一隅に、守護尊として安置されている等身大の木造毘沙門天(びしゃもんてん)立像(市文)があげられる。肥満型で短軀(たんく)の動きのある姿態、古様を示す衣文などの表現は、強い個性を示し、本寺の地蔵菩薩や観音菩薩と共通する作風を示している。現状は、天衣の遊離部、沓(くつ)先、邪鬼、光背など、江戸期に入ってからの補修と補作と考えられる。とくに面貌の白色顔料による補彩、玉眼の嵌入(かんにゅう)、衣甲の古色塗による補彩など、その姿態はいちじるしく変容している。