木造薬師如来立像

1069 ~ 1070

県宝 一〇世紀後半 松代町西条 清水寺蔵

桂材 一木造 彫眼 肉身部漆箔、衣部古色塗 像高一〇四・〇センチメートル

 桂材を用いた一木造で、内刳りをほどこさないが、両手首は別材矧(は)ぎとする。頭部の別製の螺髪(らほつ)はすべて亡失し素地になっている。高く盛りあげた肉髻(にくけい)部と地髪部、そして通肩(つうけん)の大衣の端を右肩に懸ける、その作風は古様を示している。また重ねるようにうねらせた衣文は、平安時代前期の特色がうかがえる。全体的に豊かな個性を示す像容は、本寺に祀(まつ)られる観音菩薩立像や、地蔵菩薩立像などと共通した様式が認められるが、面相部や体部の抑揚をおさえた量感は、比較的おだやかで、また衣文の刻みも鋭さに欠ける。製作年代は一〇世紀後半と推定され、在地の仏師による造像と思われる。なお肉身部の漆箔、衣部の古色塗、光背・台座はすべて近世になってからの補作である。

 藤原時代の七仏薬師(しちぶつやくし)は、七体の等身坐像や三尺の立像であらわすものと、『阿娑縛抄(あさばしょう)』(天台密教の諸作法・口伝(くでん)を抄録)や『覚禅集』(真言密教の図像集)に説かれている。明らかに本像は三尺の薬師如来立像で、その特異な印相から七仏薬師として造立された可能性が高い。