重文 一〇世紀 若穂保科 清水寺蔵
桜材 一木造 彫眼 古色塗 像高八四・五センチメートル
頭体幹部は桜の一材から彫出し、背面に背刳りをほどこし背板を当てる。膝下(ひざした)は両脚部から裳先まで横一材で彫りだし、像底から内刳りをほどこしている。頭体部の奥行きの深さ、また膝から脚部にかけての厚みは、立体感あふれる堂々とした一木彫成像で、現状では古色塗がほどこされている。特徴的には、肉髻(にくけい)と地髪の境がなだらかで、盛り上げるようにていねいに刻まれた螺髪(らほつ)は、額にかぶさるように垂れている。ふくよかで穏やかに刻まれた面貌は、笑みをたたえた表情である。全体に簡潔な衣文は浅くととのっている。
製作年代は、平安時代初期、九世紀の力強い造形が、平安時代後期の穏やかなものに移行する一〇世紀ころの作風を示している。厚手の裳先を本体から彫出し、また裳先の端を折り返す手法などは、本尊の千手観音像と共通するが、量感あふれる彫成からみると、製作年代は主尊よりわずかに先行するかもしれない。