木造聖観音(しょうかんのん)立像 前立尊

1074 ~ 1075

重文 一二世紀 若穂保科 清水寺蔵

檜材 一木造 彫眼 彩色 像高一七七・〇センチメートル

 檜材の一木造で、頭体幹部を一材より彫出し、背面は内刳りをほどこし背板風に別材を当てる。両腕、両足先、天衣遊離部などは別材を矧ぎ寄せる。五束の髪を側面から後方に垂らす垂髻(すいけい)、列弁紐(ちゅう)一条の天冠台、髪際は毛筋彫りである。面相部は白毫相(びゃくごうそう)で、頰張りの豊かな面貌、両眼を見開く表情は個性的な彫成といえよう。体部は天衣、条帛(じょうはく)、二重折返しの裳を着け、左手は屈臂して事物を執り、右手は五指を伸ばし、わずかな動静で腰を左にひねり、右脚を前方に踏みだして立つ。体部全体の肉づけの抑揚はおさえられ、また衣文の刻みも全体的に浅く刻まれている。表面の彩色は、現状ではほとんど剥落しているが、当初と思われる団花文(赤、緑の繧繝(うんげん)彩、白輪郭)は古様をとどめている。動勢を極力おさえてととのえられた作風、背面の衣文をいっさい省略した彫成、体部全体のバランスのとれた姿態など、製作年代は、一二世紀の作風を示している。